旅行先で必ずお腹をこわす夫
こんなはずではなかったと思うのが、私が選んだ我が夫だ。有名大学の看板学部を卒業し、大手一流商社勤務。語学が堪能で、将来的には海外赴任もありえるかもしれないと思って選んだ相手だ。私は中堅女子大卒で容姿以外は誇れるものが何もなく、お取り寄せスイーツと海外旅行が趣味のどこにでもいる女だったが、夫との結婚で勝ち組になったと思っていた。ところが、夫はここぞという時に頼りにならない、情けない男だった。
例えば私の好きな海外旅行。夫は旅行先で必ずお腹をこわす。衛生状況の悪い発展途上国ならまだしも、多くの日本人が気軽に訪れるハワイやグアムでさえ、夫はお約束のように腹痛を起こす。同じものを食べ同じように行動しているのに、ダウンするのはいつも夫だけ。夫の強みの語学力を活かせるのは、病院で自分の苦しい病状をお医者様に伝える時だけなのだから本当に腹がたつ。
海外赴任への夢も、先日の人事異動で恐らく潰えたと思う。彼の異動先はボールペンの先の部分を扱う部署だという。ボールペンの先の部分を扱う部署があるということだけでも驚きだが、同期の中には夫と正反対で、花形であるロケット関連部署に異動した人だっている。地味な部署で一生懸命働いたって、外部にアピールできるものがない。これで出世は、同期トップの人よりおおよそ10年は遅れただろう。
ハンを押したように規則正しく、毎日帰宅してくる夫。いつもニコニコと朗らかで、いい加減な家事しかしない私にも結婚当初から変わらず優しいが、私の描いていた夫婦生活とは全く違う。仕事が忙しくあちこち飛び回っている夫を、一途に待ち家庭を守り続ける妻。そんな夫婦像が理想だったのに、現実は違うのだ。
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